(2)本みりんの変遷
甘い飲用酒類として飲まれていました。
「守貞慢稿」(1837年~1867年)には、関東で鰻のたれや蕎麦つゆに「みりん」が使われていることが記述されていることから、みりんは、調味料として使用が定着したものと思われます。
一部の一般家庭での使用が始まりますが、まだ贅沢品であり日本料理店で使用されることが多かったといわれています。
一般家庭に普及し、わが国の代表的な調味料の一つになりました。
みりんの定義(酒税法第3条第11号)
米・米こうじに焼酎又はアルコール、(その他政令に定める物品)を加えてこしたもので、アルコール分が15度未満で、エキス分が40度以上のもの。
※政令で定める物品は、ぶどう糖、水あめなどです。
本みりんは、一般的には米(もち米、うるち米)、米こうじ(うるち米)に焼酎又はアルコール、(その他政令に定める物品)を原料として仕込み、40日~60日間に掛けて糖化・熟成させて濾したものです。
この仕込み期間中、米こうじを利用して、もち米のでんぷんやタンパク質が分解され、各種の糖類、アミノ酸、有機酸、香気成分などが生成されて、本みりん特有の風味が形成されます。
糖類の由来は、もち米と米こうじに含まれるでんぷんが糖化されたものです。主な糖類として、全体の70%~80%を占めるグルコースのほか、イソマルトース、オリゴ糖があります。
窒素化合物は、もち米、米こうじのタンパク質が分解されてアミノ酸やペプチドになります。主なアミノ酸としてグルタミン酸、ロイシン、アスパラギン酸があります。また、主なペプチドとしてアラニル・セリン、グリシル・グリシンなどがあります。
有機酸は、殆どがもち米、米こうじに由来します。主な有機酸として乳酸、クエン酸などがあります。
香気成分は、本みりんの匂い香りのもとで、もち米、に由来するもの、麹の代謝に由来するもの、糖化・熟成中の非酵素的化学反応によるものに大別されます。主な香気成分としてフェルラ酸エチルなどがあります。
本みりんに類似した調味料として、「みりん風調味料」と「発酵調味料」ありますが、製法や成分が異なっています。本みりんとみりん類似調味料との相違点は下図のとおりです。
区分 | 本みりん | みりん類似調味料 | |
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みりん風調味料 | アルコール発酵調味料 | ||
原料・製法 | 米(もち)、米こうじ、焼酎 (醸造アルコール)、 糖類などを糖化、熟成 |
糖類、米、米こうじ、調味料、 酸味料などを混合 |
米、米こうじ、果実、砂糖類、 アルコール、食塩などを 発酵、混合 |
アルコール分 | 約14% | 1%未満 | 10%前後 |
塩分 | 無塩 | 無塩 | 2% |
酒税法上の注意 | 酒類 | 非酒類 | 非酒類 |
本みりんの代表的な調理効果は、次の7点挙げられます。
参考文献 酒類総合研究所(情報誌、お酒のはなし)・みりん研究会(本みりんについて)